「心というものはあなたにもよく理解できないものなの?」


「ある場合にはね」

と僕は言った.


「ずっと後にならなければそれを理解することが出来ないという場合だってあるし,

その時にはもうすでに遅すぎるという場合だってある.

多くの場合,我々は自分の心を定めることが出来ないまま

行動を選び取っていかなくちゃならなくて,

それがみんなを迷わせるんだ」

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「疲れを心の中にいれちゃだめよ」

と彼女は言った.

「いつもお母さんが言っていたわ.

疲れは体を支配するかもしれないけれど,

心は自分のものにしておきなさいってね」


「そのとおりだ」

と僕は言った.


「でも本当のことを言うと,

私には心がどういうものなのかがよく分からないの.

それが正確になにを意味し,

どんな風に使えばいいかということがね.

ただ言葉として覚えているだけよ」


「心は使うものじゃないよ」

と僕は言った.

「心というものはただそこにあるものなんだ.

風と同じさ.

君はその動きを感じるだけでいいんだよ」

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